MEDIA

おとなのための総合音楽情報紙 みんなの歌謡曲 第180号 平成29年7月20日発行 掲載記事

☆ 注目の作家 七海 光
-名プロデューサーから作曲家へ 林部智史「あいたい」を担当-

昨年末、レコード大賞・新人賞と有線大賞・新人賞を受賞した林部智史「あいたい」。
作曲家・七海光(ナナミ ミツ)の名が世に出た。新人作家と思いきや、実は音楽プロデューサーとして数々のアーティストを世に送り出しています。その代表アーティストは、オカリナ奏者・宗次郎、シンセサイザー奏者・喜多郎など、いわゆる癒しの音楽が中心で、特に喜多郎の米国進出、米グラミー賞受賞の足掛かりを作った人物です。なるほど「あいたい」が人心に沁みるメロディなのも納得がいきます。仕事柄長年積み上げてきた経験から、世に出ていくアーティスト、特に無名の新人をひと目見聴きするとピンとくるそうな。七海は作詞もするが、今回は楽曲のみを提供した林部智史もそのひとり。彼が所属する事務所の社長が七海の楽曲を気に入り、是非にと言われ実現しました。

>やはり林部智史を聴いたときにピンときたのですか?

そうですね。最初「あいたい」を歌ったデモテープが男女1名ずつ上がってきた時、林部くんの歌声を聴いてピンときて、林部くんのことは全く知りませんでしたが、「歌わせるなら絶対にこの男の子がいい」と事務所の社長さんに何度も伝え、彼が歌うことになりました。

>彼は最初から歌が上手かった?

彼がカラオケ番組でチャンピンになっていることは全く知りませんでした(笑)無名の新人だと思ってましたが、歌のテクニックよりもその世界観を人心に伝える感覚が抜群でとても驚きました。久しぶりに逸材だと思いましたね。

>歌について本人に何かアドバイスをしたんですか?

いいえ、何も。歌う事についてはもう出来上がってましたから。それよりも、彼の歌をたくさんの人に聴いて頂くにはどうしたらいいのか考えました。でも、今回私は作曲家の立場で現場の制作陣には入っていませんからどうしたものかと。そこで考えたのが楽曲のクオリティを上げてくれる腕利き編曲家を制作側に紹介する事でした。それが坂本昌之さんです。今この業界でトップのアレンジャーの一人になった彼とは本当に長い付き合いで、彼が上京後に所属していたのが私の音楽制作会社だったこともあり、私の曲ならば是非、と快く引き受けてくれました。

>今後はどんな歌い手さんに楽曲を提供されるのですか?

実は今まで私がプロデュースしてきたのはインストゥルメンタル音楽が多かった事もあり、歌謡曲が大好きなのに仕事的には歌謡曲のフィールドの方たちと接点が余りありませんでした。なので、私のHPでデモ曲を公開し、スマホでも聴けるようにして、楽曲とアーティスト・歌い手との出会いを見つける試みを始めています。勿論基本的に業界の方に限らせて頂きますが、歌いたい!と熱意のある方ならばコンタクトしてもらって、新人を発掘する意味でもいいのかな、とも思っています。

>最後に今後の抱負をお聞かせください。

70年代の終わり頃からずっと東京・青山と米国ロサンゼルスを行ったり来たりの生活をしてきましたが、ここ数年は八ヶ岳の麓・蓼科高原に拠点を移しました。こちらには自分のレーベルの楽曲制作スタッフと機材等もあるので、ある意味、楽曲制作に対する自由度が高いのがいいところです。自然の環境に囲まれて楽曲に対するインスピレーションの湧き方にも違いが出ますね。それらを踏まえ、インターネット環境をフルに活用して作詞・作曲家としての音楽制作活動をさらに進めていきたいと思っています。